Screen Tests (1964-1966, Andy Warhol)

ひとつ4分間の「スクリーンテスト」を20本たてつづけに見るのはなかなか退屈だ。
ロチェスターではひときわ変わったプログラムを組むDryden Theatreでも、実験映画を見る機会はなかなかない。

重いカラシ色のカーテンに縁取られたスクリーンに映し出されるウォーホル・ファクトリーの煉瓦の壁。やはりウォーホルの映画は美術館で観るほうが違和感はないかもしれない。

数え切れないほどある『スクリーンテスト』は、現在すべてMoMAの管理下にある。1964年から1966年にかけてウォーホルは「ファクトリー」(彼のアトリエ兼サロン)の常連や訪問者の「スクリーンテスト」と称したポートレートを収集した。なるべく動かないように、というのがおおよそのコンセプトらしいが、なかには瞬きもせずに涙するひともいるものの、このコンセプトは往々にして忘れられていたようだ。より一貫性があるのはどのスクリーンテストも100フィートのフィルムの端から端まで使い切るかたちで撮られていることか。100フィートの16mmフィルムをボレックスのサウンドスピードで撮り(24フレーム/秒、2分45秒)再生はサイレントスピード(16フレーム/秒、4分)に引き伸ばす。すべての動きはほんの気持ちだけ引き伸ばされ、瞬きや唇をなめる仕草は独特のエレガンスを帯びる。まるでマリファナを吸っているようなゆったりした動きだ(ファクトリーではどっちかというとヒロポンが主流だったようなので、スクリーンに映し出されるゆったりとした雰囲気はより際立ったかもしれない)。

当時はファクトリーで適当に上映されたり、詩の朗読にあわせて上映されたりと、わりとカジュアルに上映されることが多かった『スクリーンテスト』も今ではMoMAの刻印がしっかり押された10本(10人)を一セットとしたリールで貸し出される。今回上映されたのは:

Reel 3
Henry Geldzahler
Twist James Rosenquist
Berverly Grant
Pat Hartley
Roderick Clayton
Tony Towle
Kyoko Kishida
Charles Aberg
Paul Thek
Gerard Malanga

Reel 25
Beverly Grant
Chuck Wein
Peter Hujar
Ed Hood
Ivy Nicholson
Jane Holzer
Brooke Hayward
Sally Dennison
Suzanne de Maria
Ann Buchanan

女優の岸田今日子は証明やフレーミングでデフォルメされることなく、とてもきれいに撮られていた。今回は見れなかったが、Dennis Hopperなどのプロの俳優やJim MorrisonやLou Reedなどの歌手のスクリーンショットもあるようだ。圧倒的な存在感を誇示したのはアメリカのアンダーグラウンド映画の女王Beverly Grantだ。自分の長い髪の毛をくもの巣のようにすくい上げ石像のように静止する。まるで石塊から身を脱そうとするミケランジェロのモーゼのような動静の緊張感だ。

ウォーホルの映画はできることならシネマテークでも美術館でもなく、もう少しローブラウなポルノ劇場などで見たいと思う。静まりかえった映画館でじっくり20人のポートレートを観るのも、哲学的な思考にふけったりするにはいいかもしれないが、どうもしっくりこない。逆にピッツバーグのウォーホルミュージアムのように、明るい部屋にたくさんならべられたスクリーンでウォーホルの映像作品を見比べるのにも抵抗を感じる。ウォーホルが『キス』をFilmmakers Coopで予告編のように上映したように、何週間かかけたシリーズとして、本編の前に上映できたらおもしろいと思う。MoMAの10本1セットというパッケージがあるため難しいかもしれないが。